GP2008


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アクティブ・ラーニング型学生派遣・
受入プログラムの構築を通じた広域的な大学間連携

活動報告

■ ひょうご大学推進協議会 問題解決型フィールドワーク

医療検査学科 教授 坂本秀生

 兵庫県下の大学および短期大学相互の連携を高めるため、平成18年6月に大学コンソーシアム神戸が設立されました。さらに平成20年10月に「アクティブ・ラーニング型学生派遣・受入プログラムの構築を通じた広域的な大学間連携」が文部科学省 戦略的大学連携支援事業として採択され、ひょうご大学連帯推進協議会が設立されました。

 この協議会で開催された平成21年のプログラムに、本学から医療検査学科2年生の男女各2名づつ、神戸大学の保健学科3年生の男女各1名の計6名が、臨床検査の日米間における違いを調査すべくワシントン州シアトル市へ向かいました。このプログラムはただ現地を訪問するだけでなく、事前に課題の提出、フィールドワークの行い方、インタビュー方法、危機管理法等の学習会が開催され、学生達は全てに出席が義務づけられていました。
 加えて本学の学生は2年生でまだ日本の臨床検査室の現状に詳しくないので、神戸大学病院臨床検査技師長を長くお勤めになった、本学の向井正彦講師を通して同検査室の見学もさせて頂いてから渡米に臨みました。

 8月23日にシアトル入りし、前半一週間は風光明媚な海沿いのユースホステルで毎日6時間の英語研修。この研修は他のフィールドワークを行うグループも一緒に、総勢20名での合宿状態でネイティブスピーカーによる毎日6時間の英語研修でした。神戸大学、兵庫県立大学、関西学院大学、芦屋大学等の学生達と触れ、日本人同士ではありましたが、文系学生との交流と言う面での、異文化交流も行えました。

Everett Clinic 最初から大きな病院で調査せず、初日は地域密着型のEverett ClinicProvidence Regional Medical Centerを訪問しました。Clinicですので入院病棟を有していませんが、地域医療の中核を担っており、創設時よりかなり規模を広げています。学生達が初めて見るアメリカの病院、患者さんの姿を院内であまり見かけず、ソファーや水槽もあり、どこかのロビーに迷い混んでしまったかの錯覚を覚えてしまいます。日本の医療施設と異なる雰囲気を率直に感じ、どうしてだろう?との疑問を元に、医療保険制度にまで目を広げ、興味深い調査を行った学生もおりました。

シアトル子供病院 2日目はシアトル子供病院でのフィールドワーク。小児専門ですので院内には動物や乗り物のイラストやオブジェが満載です。病院全体を案内して頂きながら、シアトル市にある医療施設はワシントン州だけでなくアラスカ州、アイダホ州、モンタナ州などアメリカ北西部の医療を担っているとのお話し、この施設ならではの患者と家族に対する対応等を伺いました。アメリカでは生理検査は臨床検査技師の業務では無いのですが、お願いして超音波検査室及び脳波検査室での聞き取り調査を行ってまいりました。午後には病院の経営効率化とそれに対する取り組みのレクチャーを受け、講師の方と共に導入前後の疑似体験を通し、整理整頓がいかに大事かを再認識したようです。このような取り組みに興味を覚え、さらに入念に調査を進めた学生もおりました。

ワシントン大学 3日目はワシントン大学メディカルセンターとワシントン大学の臨床検査学科の訪問。ワシントンメディカルセンターは全米で11位にランクされるトップクラスの病院で、今回の目玉的な施設でした。調査に協力して頂いたのは、ワシントン大学臨床検査学科長のDr. Lampeです。さぞ最新の実習設備が整っているかと思いきや、置いてある機器類は年代物が多く、実習室は本学3号館一階のスペースと同じほどの広さがあるのみで、本学のほうが設備も規模も立派なほどでした。その後、大学病院の臨床検査室を案内して頂きましたが、調査も3箇所目になると、学生の見る目や質問する内容も異なり、自ら沢山質問するようになり頼もしかったです。

 4日目の午前中はプージェットサンド血液センターにて調査。このセンターは血液だけでなく、骨や臓器等も移植用に保存しており、実物の大腿骨や指の骨を見せて頂き、管理方法も熱心に聞き入っていました。英語でミニレクチャーもあり、学生はしっかり講師の質問に答えておりました。午後は遺伝子検査を行っているGenelex社を訪問し、アメリカでの遺伝子検査がすでに商業ベースで企業として成り立っていること、薬剤耐性を調べるために酵素の遺伝子多型を調べ、オーダーメイド医療につながることに関心を持ち、調査を行った学生もおりました。

シアトル小児病院 最終日の5日目は再度シアトル小児病院を訪問し、終日を臨床検査室での調査に過ごしました。最初の2時間程は全員でレクチャーを受けたのち、様々な検査部門の見学を行いました。これまでの調査で解けなかった疑問だけでなく、他施設で聞きそびれた質問を行い、その姿を見て嬉しかったです。団体行動の後は1−2名ずつに別れ、複数部署を1時間づつローテーションで回り、ほぼマンツーマン状態で計5時間ほどに及んだ調査は学生達にとっては最も厳しい時間のように思えました。ところが、全てのローテーションを終えると学生達が口々に「辛かったけど、充実していた」と前向きなコメントを述べ、短期間での成長に目を見張りました。

 さて圧巻は帰国後に行われた調査発表。私は続けて出張していたので、発表当日まで学生達の内容を確認しておらず、ドキドキしていました。ところがそんな心配は無用で、大学2年生が短期間で行ったとは思えないほど調べ、堂々とした発表。評価委員の先生方が、「思わず聞き入ってしまった。」とおっしゃる程にわかりやすく、日米の医療制度の違いを述べて発表し、評価も高かったです。
 怪我や事故も無く全日程を終了でき、まずは一安心でした。参加した学生達の努力が一番ですが、学生達を指導された多くの先生方の賜物でもあり、今回の事業に快く許可を頂けました、学長の上田先生を初めとする神戸常盤大学の教職員の皆様に感謝し、報告を終えさせて頂きます。本当にありがとうございました。